■アルツハイマー病のなりやすい8因子と、なりにくい2因子
復旦大学(中国)のJin-Tai Yu氏
アルツハイマー病の発症リスクに影響を及ぼす可能性の高い、10項目の因子が明らかになった。
糖尿病はリスクを高める因子の一つだという。
復旦大学(中国)のJin-Tai Yu氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果。
アルツハイマー病は高齢者で最も多いタイプの認知症。
米国アルツハイマー病協会によると、米国の65歳以上の人のうち500万人以上が罹患しており、2050年までに3倍に増えると予測されている。そのため、予防法の確立が急がれている。
Yu氏らは、アルツハイマー病の危険因子と抑制因子を検討した論文のシステマティックレビューを実施。PubMed、EMBASEなどの文献データベースに2019年3月までに公開された論文を対象として、「アルツハイマー」、「認知症」、「予防」、「リスク」などのキーワードで検索したところ、3万3,145件の観察研究と1万1,531件の無作為化比較試験、計4万4,676件の論文がヒットした。事前に定めていた適格基準を満たすものとして、観察研究243件と無作為化比較試験153件、計396件の論文を抽出し、メタ解析を行った。
その結果、アルツハイマー病リスクの増大と関連する強いエビデンスのある因子として、①糖尿病、
②肥満、
③高血圧、
④起立性低血圧、
⑤高ホモシステイン血症、(ビタミンB欠乏)
⑥頭部外傷、
⑦ストレス、
⑧うつ病
という8項目が浮かび上がった。
それに対して、
①教育歴の長さや、
②高齢期の認知活動(例えば読書)の
2項目は、アルツハイマー病リスクの低下と関連することが強く示唆された。
また、エストロゲン補充療法やコリンエステラーゼ阻害薬は、アルツハイマー病リスク低下を意図しての使用は推奨されなかった。
このほか、社会活動への参加、拡張期血圧の管理、非ステロイド性抗炎症薬、農薬への曝露などは、アルツハイマー病リスクへの影響を判定するにはエビデンスが十分でなく、さらなる検討が必要と判断された。
今回の研究で示されたこれらの知見は理にかなったものではあるが、著者らは「本研究の結果から導かれる推奨に従うことで、アルツハイマー病の発症を防ぐことが可能だと保証するものではない」と述べている。そして「アルツハイマー病を予防するための有望な方法を明らかにするため、エビデンスをさらに強化しなければならない」とし、より質の高い前向き観察研究や無作為化比較試験を早急に行うことを提案している。
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