■運動によるうつ病予防は遺伝的高リスクの人にも効果
米マサチューセッツ総合病院精神科
および米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院に所属するKarmel Choi氏
うつ病を発症するリスクが遺伝的に高くても、運動することで予防効果が得られる可能性があることが、米マサチューセッツ総合病院精神科および米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院に所属するKarmel Choi氏らの研究から明らかになった。週4時間の運動で、新たにうつ病を発症するリスクは17%低下することが分かったという。
この研究は、大規模な前向き研究である英国バイオバンクに参加した成人7,968人の遺伝データを分析したもの。電子カルテと生活習慣に関する質問票調査への回答も用いて、うつ病の遺伝的リスク別に、身体活動と将来の発症リスク低減との関連を調べた。
その結果、うつ病になりやすい遺伝的素因を有する人は、調査開始から2年以内にうつ病と診断される可能性が高かった。一方、研究開始時点の身体活動レベルが高い人ほど、うつ病になりにくいことも分かった。このような運動による保護効果は遺伝的リスクが最も高い群でも、身体活動レベルが高いほどうつ病リスクは低減することが明らかになった。
また、今回の研究では、エアロビクスやダンス、エクササイズマシンなどの高強度運動と、ヨガやストレッチなどの低強度運動はいずれもうつ病予防に役立つことが分かった。
さらに、週に4時間の運動を行うと、うつ病を発症するリスクが17%低下する可能性も示されたという。
Choi氏は「今回の研究結果から、うつ病の遺伝的なリスクは“宿命”ではない可能性が強く示唆された。遺伝的にリスクが高い人でも、身体活動レベルを高めれば、うつ病リスクを抑えられる可能性がある」と結論。その上で、「平均して運動を毎日35分行うとうつ病リスクは低減し、将来の発症予防にもつながる可能性がある」と述べている。
現代社会の中で、うつ病は世界的にも身体障害を引き起こす主因とみなされている。
「世界中の患者数の多さを考えれば、できる限り多くの人が実践できる効果的な治療法や予防策を見出すことが強く求められている」と、Choi氏は強調。「メンタルヘルスやプライマリケアの診療医は、この研究結果を根拠に、患者にうつ病の家族歴があっても、予防のために運動を勧めることができるだろう」と付け加えている。
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